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聖域への挑戦 ~人工心臓の歩み~

  • 初期の人工心臓
  • 補助人工心臓の登場
  • テルモと人工心臓の関わり

昔、大空を羽ばたいてみたいと思った人間は鳥を真似ました。飛行機ができるまでには、鳥と同じような羽がなくてもいいんだという発想の転換が必要でした。

人工心臓も同じでした。最初、開発者たちは心臓を真似た機械を作ることに情熱を注ぎました。形も心臓そっくりで、ドックン、ドックンと鼓動しました。やがて、心臓は血液を全身に送れればいいということに気がついたのです。

そして羽根車が回り、連続的に血液を送り出す人工心臓が誕生しました。

初期の人工心臓

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人工心臓の開発は実際の心臓の模倣から始まりました。心臓を取り出し、代わりに機械を植込み、永久に使用できる人工心臓が研究されました。

しかし、初期のものには長期にわたって使えるほどの耐久性はなく、また、血液は異物に触れると固まり、血栓と呼ばれる血液の固まりができてしまうという大きな問題が立ちはだかりました。さらに、初期の人工心臓はポンプ機能を体内に収めきれず、体外の動力装置にチューブやワイヤで結ばれているので感染症を起こしやすいのも問題でした。

少しずつ問題を克服していきましたが、なかなか実用段階にはいたりませんでした。

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補助人工心臓の登場

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1969年に人工心臓は、初めて移植心臓が見つかるまでの「つなぎ」として64時間使われました。これは臨床医師によるかなり実験的な試みでしたが、「つなぎ」という発想は永久使用のみを考えていた当時の研究者にとってはまったく新しい視点でした。

この後、心臓移植までの「つなぎ」としての人工心臓の開発が進められました。主流となったのが心臓、特に左心室の働きを助ける補助人工心臓です。患者の 80%はもっとも負担が大きく、弱りやすい左心室の補助で心機能が十分回復するためです。また、補助人工心臓はもとの心臓を残すため、心臓の回復も期待できます。回復後は人工心臓を取り外すことも可能です。現在の開発の主流はこちらになりました。

初期のものは大型で、心臓と同じように拍動して血液を送り出すタイプでした。患者は体外の動力装置に結ばれ、ベッドから起き上がることすらできませんでした。研究が進むにつれ発想の転換があり、連続して血液を出すタイプが開発され、小型化されました。さらにそれを応用させて、羽根車を磁石の力で浮かせることで、接触軸受けのないものが開発されています。2002年11月、FDAは条件付きであるものの、補助人工心臓の半永久使用を認め、いよいよ本格的な臨床応用が始まりました。

1935年 大西洋横断飛行で有名なリンドバーグが人工心臓の原型を開発。
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1958年 Kolffの指導のもと、阿久津が世界初の人工心臓をイヌに植込む。1.5時間の生命維持に成功。 click here
1962年 米国で人工心臓が国家プロジェクトとして開始
1963年 DeBakeyによりLiottaが開発した補助人工心臓の臨床応用開始
1967年 南アフリカで世界初の心臓移植
1969年 LiottaとDeBakeyの開発した完全置換型人工心臓をCooleyが初めて人に使用。移植心臓が見つかるまでのつなぎ。(ブリッジ)
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1978年 能勢らの完全置換型連続流人工心臓でウシが3ヶ月生存。連続流の可能性が真剣に議論されるようになった
1980年 三井記念病院で国内初の人工心臓(東大型・補助)の植込み
1981年 阿久津型の完全置換型人工心臓をCooleyの執刀でブリッジ使用として本格臨床応用 click here
1982年 デブリーズが完全置換型人工心臓で永久使用の臨床試験(5例)
1988年 米国でImplantable TAH(植込み型完全置換型人工心臓)開発プロジェクト開始
1995年 通産省の「体内埋込み型人工心臓システム」プロジェクト開始
1997年 日本で臓器移植法施行
2001年 米国で完全置換型人工心臓が世界ではじめて臨床使用
2002年 FDAが補助人工心臓の永久使用を条件付きで承認
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テルモと人工心臓の関わり

1991年、テルモは体外循環(心臓手術の際、心臓の代わりに人工心肺につなげ血液を全身に送り出すこと)用の遠心ポンプを応用することで、小型軽量でかつ長期使用可能な人工心臓の開発に着手しました。

開発にあたって、最大の課題は血栓の発生をいかに防ぐかということでした。1994年には、摩擦で発生する血栓を解決するため、京都大学工学部 赤松映明名誉教授とNTN株式会社が共同で考案した磁気浮上型遠心ポンプの技術を導入することにし、共同開発を開始しました。

1995年、通産省(当時)より、両心機能の代替をめざす、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主幹の「体内埋込み型人工心臓システム」プロジェクトへ主幹企業として参加しました。(2000年3月に終了)

1996年3月に開始した動物実験では、864日の最長連続運転記録を樹立し、これは現在も他を圧倒する最長記録です。

さらに本体をチタン製にするなど改良を進め、徐々に研究という段階から、商品開発のステージに進みました。2000年4月には早期の実用化を実現するため、植込み型の医療機器の開発環境が整った米国に開発チームを移しました。

2003年1月、米国に人工心臓専門の子会社Terumo Heart Inc.を設立、2004年1月にはドイツで補助人工心臓の臨床試験をスタートし、 2007年2月CEマークを取得、2007年8月に欧州で販売を開始しました。日本では、2010年に製造販売承認を取得し、2011年4月より販売を開始しました。

しかし、ポンプの通常の回転モード(磁気浮上方式※)が維持されない不具合が発生したため、植込み型補助人工心臓手術の認定医療機関に対し、2011年12月20日より本製品の新規植込みを原則として見合わせていただくようにお願いしました。

※磁気浮上方式:遠心ポンプ内部の羽根車を磁力で浮上させ回転させる方式


その後、製品改良を進め、2013年7月18日に日本で一部変更申請が承認されました。
日本においては、2013年7月25日より、販売を再開しました。

本製品のサポートにつきましては、補助人工心臓事業における専門性を高め、患者さんへより質の高いサービスを提供するために、2013年4月に設立した国内子会社 テルモハート株式会社が行います。

なお、2013年6月30日に次世代型補助人工心臓システム「DuraHeartⅡ」におけるグローバルでの早期製品化を目指して、米国ソラテック社と戦略的提携の契約を結びました。

1991年 補助人工心臓の開発に着手
1994年 磁気浮上型遠心ポンプを考案した京都大学工学部 赤松映明教授とNTN株式会社との共同開発開始
1996年 NEDOの「体内埋込み型人工心臓システム」の基礎研究を開始
1998年 ヒツジで864日の生存に成功 click here
体内植込み型人工心臓の商品化計画を会社決定
2000年 開発の場をアメリカに移す
2003年 Terumo Heart Inc. 設立
2004年 補助人工心臓の臨床試験をドイツでスタート
2007年 欧州でCEマーク取得、販売開始
(世界初、磁気浮上型補助人工心臓の実用化)
2008年 日米治験開始
2010年 日本で製造販売承認取得
2011年4月 日本で販売開始
2011年12月 新規植込み見合わせ
2013年4月 テルモハート(株)設立
2013年6月 次世代補助人工心臓DuraHeartⅡの開発をソラテック社へ譲渡
2013年7月 日本で、一部変更申請承認、販売再開
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